高槻市が「美装化」を計画している市道高槻駅前線について、たかつきこまちで独自案をつくろうという案件。「ゆっくり急ごう」と見えを切ったその後はどうなっているのか。その後の経緯と現状のあらましをお知らせします。
まずごく簡単に言うと、会では高槻駅前線の交通量調査を実施、その結果と周辺の観察から、提案づくりの手がかりとなる見解を得ることができたという状況。道路の空間再配分を検討するのに概ねポジティブな内容です。
さてこのブログで取り組みを告知した時点で、既に現地の略図や道路の名前、規制状況などをまとめたり、道路・歩道の幅員も目ぼしい箇所を計測する作業はおおよそ済ませてはありました。けれどもそうした外見的な情報だけでは問題が掴めるものではありません。
いつも決まった方法論があるわけでなく、課題をあげてから手探りで進むのは毎度のことですが、ある道路について何らかのスペース再配分を提案しようという今回のテーマでは、「動き」を捉えないことには先へ進めないことは明らかで、ならばと今回試みたのが交通状況の把握でした。いわば"動的"な状況把握でしょうか。
とはいってもやはり手探りに違いありません。皆さんはたまに交差点で椅子に座った調査員が車や通行人の数をカウンターで数えている光景(※)を目にしたことはないでしょうか。そうした調査ではきほん朝の8時から12時間、ノンストップで計測を行うとのことですが、動員力も予算もない当会ではまずムリ。時間のとれる者(基本1名)が朝9時から5時までを目標に可能な限りで行うというユルい調査。交代要員がないのと不審者として怪しまれるリスクもあったので計測も通しではなく1時間に10分としました。
※今は道路脇に設置したカメラで撮影したビデオから計測するのが主流となりつつあるとかで、ヒトが現地でカウントする方式は過去のものとなりつつあるようです。
はたしてこんなラフな調査で何かを捉えることができるのか、骨折り損で終わってしまわないか恐る恐るだったのでしたが、結果、わりとはっきりとした違いが浮かんできたのでした。
上のグラフからは駅前線の通行台数には方向別に大きな違いがあることが見てとれます。3回の調査の何れにおいても、駅前広場へ向かう南行が北行の2倍かもしくはそれ以上もの台数となっています。
タクシーに絞ってみた集計(↓)からは、タクシーの通行数は平日で全体の3.5%と、全体のごくわずかな割合に過ぎないことが判明。週末ではその割合は2%台とさらに小さな値となります。
高槻駅前線というのは、JR高槻駅北側の駅前広場が起点になっている道です。駅前広場は公共交通の乗降場になる例に漏れず、ここではタクシー乗り場となっています(かつてはバスが通っていたこともあったとのこと)。
なので高槻駅前線は西国街道からJR駅前のタクシー乗り場と、広場へ家族や来客を送り迎えする一般の車利用者が利用する盲腸型の道路というイメージがありました。ですが実態はかなり違っているようです。
- 高槻駅前線の通行では方向別に通行量の大きな偏りがある(通行台数の南北の開きは北行1に対して南行が概ね2倍かそれ以上)
- 通行数全体に占めるタクシーの割合はごく低い
- タクシーはほぼ高槻駅前線のみを上下していると見られる(タクシーの通行台数が南行と北行でほぼ同数)
高槻駅前線南詰の駅前広場からはもう一本、別の道路(白梅町1号線)が出ています。高槻駅前線から駅前広場へ入ってきた車の約半数が、この道へ抜けていて、それらは主として一般の乗用車らしいという高槻駅前線での交通量調査の結果。
こうして得られたファクトと更に別の箇所の計測と観察等から、高槻駅前線は駅前の大型商業施設阪急スクエアの駐車場へのアクセス路になっているのでは?という仮説が浮かんできました。
歩行者デッキで分かりづらいですが、道の向かって右は駅と線路、対して左手には大きなマンションなどが建っています(この道路もマンションも平成になって撤退した工場跡地の再開発に伴ってできました)。
マンションの住民のうち車を利用する方やその訪問者、配送の車両等はこの道を通って出入りします。道は東(写真奥)への一方通行なので、車の利用者は高槻駅前線を経由せざるを得ません。なので当初、このタワーマンションへ出入りする車が高槻駅前線の南北交通量の偏りの元かと想定したこともあったのですが、少なくとも日中においてはマンションへの車の出入りは目立った様子は見られず。大半の車はマンションの出入り口をスルーして進んでゆきます。
マンションの出入りを数量把握していない雑さは残るのですが、実際のところここまで観察していると、高槻駅前線から駅前広場を通過して東へ進む車の行方はおよそ見当がつくのでした。その行き先とは先にも書いた阪急スクエアの立体駐車場です。けれどもこの時点で断定するのは避けるべく、東枝(白梅町1号線)の先の二手に分かれている丁字路にて追加の調査を行いました。
この丁字路(上の写真)まで進んで来た車がここから右左のどちらへ進むかというごく単純な調査です。想定では左折が優勢の結果になるはずです。
はたして結果はほぼ予想のとおりでした。駅前広場から東の枝(白梅町1号線)を通って丁字路まで進んだ車の70%がここで左折。あまり細かな差異を詮索できる調査ではないですが、この割合は乗用車に限ればもう少し上昇(74%)します。また、阪急スクエアの開店前の9時台では乗用車の左折比は57%と左右が比較的拮抗した割合になっていたのも駐車場利用を逆に裏付けているように伺えます。
下の写真は立体駐車場の入り口付近、駅前の大型商業施設『阪急スクエア』(旧高槻西武)の来客用駐車場です。日中はひっきりなしに車が出入りしています。
以上の結果から、高槻駅前線、駅前広場、白梅町1号線、を経て交差点を左折し駐車場へ至る経路が浮かんできました(上図)。見るとたいへん遠回りの経路になっていますが、駐車場が面する道のセンターにポールが立っていて対向側の車線から入場できなくしているために生じている動きだと分かります。安全面の配慮からこのように道路に面した店や施設へ車が右折して入ってくるのをできないようにするのは、今では普通に見られることですね。
ではこうして捉えた車の流れは、高槻駅前線を考えるにあたってどういうことなのでしょうか。それは、もしこうした「通過交通」が除去されれば、高槻駅前線は大幅に交通量を減らすことになるはずだということです。
なお駐車場の運営者はドライバーに対して下の写真のような来場ルートを示しています。
これを、高槻駅前線を通過する車の経路と併せて図に落としてみました。
駐車場運営者の掲げる経路(青線)も相応の遠回りになりますが、少なくとも駐車場運営者は高槻駅前線を経路として含めていないのが判ります。ドライバーには単に周知が進んでいないだけなのかどうかは分からないですが(右折を求める経路が嫌われている?)、駐車場運営者も阪急としても、タクシーと乗客の乗り降り、一般の人々らの駅付近への送迎、およびマンション住民の出入りといった機能を阻害することになりかねない高槻駅前線の利用を積極的に推奨しないことは常識的に推察されるのではないでしょうか。
先ほど「通過交通」が除去されれば、高槻駅前線の交通量は大幅に交通量を減らすことになるはずだ、と書きました。交通量の削減は、その道路を歩行者や自転車などのためにより多く空間を配分しなおす有力な根拠となります。
では高槻駅前線を駐車場へのアクセス路として使われなくするにはどんな方法があるでしょうか。高槻駅前線の「通り抜け」を禁止して取り締まりを行う、というのも方法かもしれません。実施のハードルから見れば可能性は高いと思われますが、肝心の実効性は高いとは言えないでしょう。会では今のところ、駅前広場から東へ出ている道(白梅町1号線)の一方通行の向きを逆にするのが(実施の可能性は別として)実効性の高い方法かと考えています。そうすれば高槻駅前線を駅前広場まで進んでもそこからは引き返してくるよりなくなってしまうからです。
以上が本件についての進捗のあらましです。今後は通過交通の排除のやり方も含めて高槻駅前線の空間配分の具体案を描く段階に進みます。会にも歩行者の居心地をより重視したい者、車の利便性も一定程度担保したい者もいてまだ曲折はあるかもしれませんし、全体として「ゆっくり」ばかりで「急ぐ」のがままならない状況に、いつ工事が始まって事実化が進んでしまわないかとそれが何より気懸りです。
ここまで、初回は調査時間が短く、同じ調査時間数で比較できるのは二回目(5/30)と三回目(6/28)のたった二回、さらに東枝の先の丁字路での調査は1回きりという限られたデータで考察を進めたのはいささか強引だった感は抱いているのをお断わりしておきます。せめて平日と週末をそれぞれ複数回調査して信頼度を上げたいところでしたが、当会の動員力では致し方ないというか、仮にできたとしてもやたらと日数をかけてしまうことになり(この記事を書くのにも調査から数か月が経過)、手前勝手ではありますが、一定の傾向は掴めたものとして検討を進めてきた次第。
また長文になってしまいました、ここまで読んでくださって誠にありがとうございました。
(まちとこぐひと)
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