ゆっくり急ごう、こまちの描く高槻駅前線

 当研究会では、JR高槻駅から北へ延びる道路「高槻駅前線」について、独自の改修案をつくろうという話をしています。今年元旦の記事"「ウォーカブル」な高槻駅前線の未来を考える"にてまずはその旨をお知らせしました。


「高槻駅前線」駅から上宮天満宮を望む

ここは自動車の通行数がさほどでもないわりに車道が広く、それに対して歩行者が多いわりに狭い歩道が、つまりスペース配分のアンバランスが(少なくとも当会としては)目についていた道でした。

高槻市がこの道路の「美装化」改修を計画しているのを知った会では、この事業を単に道をきれいに改装するだけに終わらせるのは惜しい、ではその道路がどんな風であればいいか、自分たちなりに描いてみようという、ということになったのでした。そんな素朴な動機から始まったのですが、記事のタイトルにどういうわけか ”ウォーカブル” という語が付いたので、これには若干の説明が必要と思いこの記事をあげさせていただきました。

「ウォーカブル」とは英語の形容詞 Walkable(歩きやすい) からきているのですが、道路やまちづくりの分野において、ある考え方を現す言葉になっています。わりと最近の言葉ですが、近年各地の道路や中心市街地の再開発にからんでよく耳に(目に)するようになってきています。国(国土交通省)が率先して進めている施策でもあります。

「ウォーカブルポータルサイト」(国交省)より


説明から「車中心から人中心の空間づくり」を強調しているのが伺えます(詳しくは直接サイトをご覧ください)。実はこの施策に高槻市も名乗りをあげていて(ウォーカブル推進都市一覧)、そうした関係もあって先の記事ではタイトルに付けてしまったようです。

もっとも、そうした空間づくりのための基準だとか決まった取り決めなどがあるわけではなく(若干の税制や建築基準の緩和策はありますが)、上の図が示すような大きな方向性のなかで、その方法が模索されているようです。

あと一応断っておきますが、当会は国とも高槻市ともは一切関係はなく、一円のお金もいただいておりません(言うまでもないでしょうがw)。

まだ数は多くないものの、そんな「ウォーカブル」や「人中心」を掲げた道づくり空間づくりの事例を見るに気になる点があります。それは自転車の取扱いです。例えば大阪ミナミの「なんば」駅付近がすっかり「広場化」されたのは多くの方がもうご存じかと思います。かつてはタクシーやバスの乗り場・待機場としてほとんど車で塞がっていたスペースだったのが、今では全く車を気にすることなく思い思いに通り過ぎたり、ゆっくりと過ごすことのできる素敵な広場に劇的な様変わりを遂げています。

現在の「なんば広場」

ただし、その広場から日本橋をつなぐ道(なんさん通り)が広場の延長として改修され、同時に自転車の通行を禁止としています。「人中心」の心地よい歩行空間をつくるなかで、自転車の利用が制限されようとしているのです。

「広場」と合わせると300m強の押し歩き区間となる

「なんさん通り」は自転車乗入れが禁止され、歩道も押し歩きが推奨されます。

通行が許可される高島屋など商店への納品車両

このような例は、いわゆる「人中心」の道づくりとされる整備事例で目につくのです。同じく大阪市内ですが、御堂筋の側道(緩速車線)を車道から切り替えて歩道を広げる工事が進んでいます。こちらはいくら何でも自転車を通さないわけではないものの、工事の前に実施された社会実験では自転車道を設けていたのが、できてみると単に歩道が広がった形になっています。

御堂筋、側道をなくして大きく広がった歩道

側道を自転車道にした社会実験(令和2年)

いちおう線引きはされているけれども、歩道と段差がまったくないので、来訪者たちにはそこが自転車用のスペースであることがはっきりと意識されず、自転車用の走行部分を構わずに歩いているのが通常の光景になってしまっています。社会実験の形から大きく後退した格好になっていす。

自転車はよく歩行者に危害を及ぼしているとメディアや行政がアピールしますが、自転車は車に対しては断然弱者です。自転車は歩行者とともに Vulnerable Road User として欧米では交通弱者とされ、カーフリー化の施策の中で自転車を排除することは一般的ではありません。静かで環境負荷の極めて低い自転車と「人中心」の道・まちはとても相性の良い存在なはずです。

上のような現状もあって、会としては国などの施策の動向をいちおうは注視しながらも「できるだけ車に依存しない町」づくりという会のモットーに沿って自分たちなりの高槻駅前線の再整備を「こんな風にしたい」「もっとこうしても良いのでは」を形にしてゆければと思っています。

さて、先月高槻市は『令和7年度施政方針大綱』を発表し、このなかで「高槻駅前線」のイメージ図を示しました。

『令和7年度施政方針大綱』より

電線が地下化されて街路がすっきりとした感じになるのが判ります。空も広く感じられて心地よさそうです。イメージなので何もかもこの通りになるのかはわかりませんが、路面も現在の殺風景なアスファルトに代わって石畳風か何らかの美観的素材で敷かれるようです。ただ、歩道と車道の幅は現状と変わらないように伺えます。図から受ける印象はたしかに「美装化」であって、それ以上のものではないようです。

とはいえ話が持ち上がってもう何か月も経過してしまいました。市はイメージ図を提示しましたから、施工の詳細はほぼ固まっている可能性が高いです。それでも何らかの形を提示できるようゆっくり急いで行こうと思う次第。案づくりに参加しようという方おられましたら是非ご連絡ください。(まちとこぐひと)

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