元福井県民の新社会人が見た高槻の交通

 私は福井で電車通学を5年間続けてきました。そして、高槻に住み京都で働いている現在でも電車通勤を続けているのですが、明らかに違うのは「時間当たりの運行本数」です。例えば阪急電鉄の場合、1時間に12~18本、特急・通勤特急が通過する駅でも6本運行しており、10分に1本の割合で同じ方面の列車が運行しています。

 これが福井(JR北陸本線、有料特急を除く)となると…1時間に1~3本。そう、朝の6時7時台は1時間に3本、その他ほとんどの時間帯は1時間に1本しか列車が運行していない状況なのです。
 1時間に1本しか列車が来なくなるとどのような影響が出るか、体験談などを含めまとめてみました。

①1日のスケジュールが運行ダイヤに合わせたものになる
 単純計算として、列車に乗る時間が1時間変わると、1日の24分の1もの時間に影響が及ぶわけですから列車の乗り遅れは致命傷となってしまいます。(もちろん、そこから路線バスなどを乗り継いでいる人はさらに倍の影響が及ぶことになります)
 となると、必然的に列車の時刻には気を使うことになります。
 また、通勤・通学においても、丁度いい時刻の列車は限られています。「この列車に遅れたら100%遅刻する」という環境で通勤・通学することになるので、「規則正しい生活が送れる」という妙なメリットも存在します。

②ラッシュ時に駅周辺が混乱する
 ラッシュの混雑自体は大阪のほうが激しく、これに関して地方都市は一見何も問題が無いように見えます。
 しかし、問題視すべきなのは「その駅に降りた人の多くが同じ目的地に向かう」ことなのです。
 この問題は比較的規模の大きい高校がある場合に顕著となります。その学校のほとんどの生徒が同じ時刻の列車に乗り、同じ時間に駅を出ることになり、しかも駅~学校間となるとルートが限られているので、交通量(歩行者・自転車)がその時間だけ異常に多くなり、相互はもちろん、自動車に対しても大変危険な環境になります。
 私もその環境で5年間過ごしましたが…それは怖かったですよ。200人もの生徒が駅の駐輪場から一斉に動きだす状況なので、出入り口や直後の交差点での軽い衝突は頻繁に起きていました。
 幸いにも負傷者が出るレベルの事故は起きていませんが、近いうちにも大きな事故が起きるのでは…と、思わず心配になってしまいます。

③ダイヤの遅れが生じやすくなる
 これは個人的な印象ですが、運行回数が少ないほうが列車の遅れが生じやすくなるという傾向があるようです。理由は天候などの要因もありますが、特有の要因として「ギリギリ乗り遅れそうな人を待ってくれる」ことが挙げられます。前述したとおり、1分の遅れが1時間の遅れにつながるので、「できるだけ間に合わせてあげたい」という人情が運転手さん、駅員さんにもあります。
 まさに古き良き文化ですが、これが原因となり遅れが生じることがあります。
 もちろんこの場合の遅れというのは2、3分程度のもので、特に生活に支障を及ぼすものではありませんが、この遅れを日常茶飯事と当時は受け止めていたので、大きなトラブルがない限り、1分の誤差もない大阪の鉄道には心底驚かされたものです。

 これらの影響があり、大抵の人は学校を卒業すると同時に自動車生活に切り替えることとなります。その結果、自動車を運転できない中高生・高齢者、経済的に自動車を保有できない人達はどうしても不利になってしまいます。

 結論として「鉄道運行回数の少ない地域は自動車保有による格差が大きい」ということが挙げられます。

 ちなみに、有料特急(京阪方面へのサンダーバード、名古屋方面へのしらさぎ)の運行本数は普通列車の本数よりも多くなっています。これは京阪方面に向かう場合、北陸自動車道、名神高速道路を通行し完全な遠回りをする自動車と比べ、直線的にも近く、圧倒的に速い鉄道のほうが重宝されるからです。
 福井を含め北陸の人々にとって、鉄道とは通勤・通学といった日常のためのツールというよりは、旅行・出張など特別な時のために使われるツールなのかもしれません。(北陸ミサキ)