交通工学より「海外情報 スイス雑感」

交通工学研究会の隔月刊誌「交通工学」の2009.Vol44.No.2より、海外情報として掲載されていた
「スイス雑感-自治体都市の伝統とグローバル化の狭間で-大口敬(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授)」より抜粋です。

~以下抜粋~
30万人規模のローザンヌ都市圏だが、都市公共交通サービスは実に充実している。ここには、国鉄、州と周辺自治体が出資するTL(Transport Lansanne)の軌道・地下鉄・トロリーバスを含むバス34路線、その他若干からなる公共交通網がある。経営母体や交通モードによらず都市圏全体で単一の運賃システムであり、経営母体や交通モードの違いを全く意識させない利用者本位の思想には大変感心した。

全ての鉄道・軌道・バスなどは、停留所・ホームの券売機や窓口で切符を購入し、乗降時の改札や支払いは一切ない。有効範囲は時間制を併用したゾーン制で、その範囲なら全モード乗り換え自由である。お得な1日バスやシーズンパス(1週間、1ヶ月、1年)があり、多くの地域住民がこれを持っている。これだと、地域内のどんな用事でも全ての公共交通機関を気儘に自由に乗り放題である。ただし検札が回ってくることがあるので、バスは常時携帯しなければならない。ぶらりと散歩に出かけ、たまたまバスが来たので乗っても良い。いくらでも乗降や乗り換えができる。小銭の準備や切符の購入・提示・精算などの心理的煩わしさと無縁で、「乗る」「降りる」という行為を特別に意識せずに、基本的な人の移動の行為である「歩く」の延長上に都市公共交通サービスがある。これこそ「公共」の「交通サービス」だと得心した。
~以上~

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高槻市とほぼ同じ人口規模ですが、34路線もの公共交通サービスがあるとは驚きです。
改札が無いことや一定範囲が乗り換え自由というのは視察したドイツ(フライブルク)でも体験したことですが、文章中にもあるように「乗る」「降りる」ということを意識せず「スニーカー感覚」で気軽に乗車できる公共交通サービスは、欧州などでは当たり前のようですね。羨ましい限りです。